相続人以外に財産を残すには?友人・甥姪・孫への「遺贈」を解説

「長年お世話になった友人に財産を残したい」

「子どもではなく、孫に直接預金を渡したい」

「甥や姪に自宅を残すことはできる?」

このような希望を持つ方もいるでしょう。

遺言書を利用すれば、法定相続人ではない人や法人などに財産を残すことができます。

これを**「遺贈(いぞう)」**といいます。

東京法務局も、内縁の配偶者や相続人以外のお世話になった人、法人などへ財産を渡したい場合には、遺言書による遺贈を利用できると案内しています。

ただし、遺贈では、

「誰に何を残すのか」
「その人は本当に相続人ではないのか」
「遺留分に問題はないか」
「相続税はどうなるのか」

まで考える必要があります。

この記事では、相続人以外へ財産を残す方法、遺贈の種類、友人・甥姪・孫へ財産を残す場合の注意点について解説します。

「相続」と「遺贈」は何が違う?

まず言葉を整理しましょう。

相続とは、原則として法律上の相続人が、亡くなった人の財産上の権利や義務を承継することです。

一方、遺贈とは、遺言によって財産を無償で他人へ与えることです。

例えば、相続人ではない友人Aさんへ、

遺言者は、〇〇銀行〇〇支店の普通預金をAに遺贈する。

と遺言することが考えられます。

法務局も、法定相続人ではない人へ財産を残したい場合には、遺言書を作成して遺贈する方法を案内しています。

「相続させる」と「遺贈する」

実務上、法定相続人へ財産を承継させる場合には、

「相続させる」

相続人ではない人へ与える場合には、

「遺贈する」

という表現を使うのが基本です。

相手が誰なのかを確認したうえで、適切な文言を使うことが重要です。

友人に財産を残すことはできる?

できます。

友人は通常、法定相続人ではありません。

そのため、

「亡くなったら友人に100万円渡したい」

と思っていても、何もしなければその友人が自動的に100万円を取得することはありません。

遺言書に、

遺言者は、友人〇〇〇〇に金100万円を遺贈する。

などと記載しておく方法があります。

特に、

「家族以上に長年支えてくれた人にお礼をしたい」

という場合には、遺贈が本人の意思を実現する手段になります。

内縁の配偶者にも遺言が重要

婚姻届を提出していない内縁関係のパートナーには、原則として法定相続権がありません。

そのため、

「20年間一緒に暮らしてきたのだから、当然財産を相続できるだろう」

とはなりません。

東京法務局も、内縁の夫婦では相手方に相続権がないため、財産を残したい場合には遺言による遺贈を検討する必要性が高いと説明しています。

例えば、

遺言者は、遺言者の所有する〇〇所在の土地建物を、内縁の妻〇〇〇〇に遺贈する。

といった形です。

内縁のパートナーへ財産を残したい場合は、遺言書の重要性が特に高くなります。

甥・姪に財産を残したい場合

甥や姪については、少し注意が必要です。

甥・姪は常に相続人ではないとは限りません。

例えば、

  • 遺言者に子や孫がいない
  • 父母などの直系尊属もいない
  • 兄弟姉妹がすでに亡くなっている

という場合には、その兄弟姉妹の子である甥・姪が代襲相続人になることがあります。

一方、親である兄弟姉妹が存命であれば、通常その甥・姪は法定相続人ではありません。

つまり、

「甥に残す=必ず遺贈」ではなく、現在の相続関係を確認する必要がある

ということです。

相続人ではない甥へ財産を残したいのであれば、遺言で遺贈する方法があります。

孫に財産を直接残したい場合

孫も同じです。

通常、遺言者の子が存命であれば、孫は法定相続人にはなりません。

例えば、

祖父
↓
長男
↓
孫

という家族関係で長男が存命なら、通常は長男が相続人であり、孫は直接の相続人ではありません。

そのような場合でも、

遺言者は、孫〇〇〇〇に金500万円を遺贈する。

などと遺言することはできます。

一方、長男が祖父より先に亡くなっている場合などには、孫が代襲相続人になる可能性があります。

したがって孫の場合も、まず現在の相続関係を確認することが重要です。

遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」がある

遺贈には、大きく分けて特定遺贈と包括遺贈があります。

種類例特徴
特定遺贈「自宅をAに遺贈する」特定の財産を指定する
包括遺贈「全財産の2分の1をAに遺贈する」財産の全部・一定割合を指定する

この違いはかなり重要です。

特定遺贈

例えば、

〇〇銀行〇〇支店の普通預金をAに遺贈する。

という方法です。

特定の不動産、預金、金額などを指定します。

「お世話になった友人へ100万円」など、比較的分かりやすい遺贈ではこちらが使われやすいでしょう。

包括遺贈

例えば、

遺言者の全財産の2分の1をAに遺贈する。

という方法です。

ここで重要なのは、民法上、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するとされていることです。

つまり、包括遺贈ではプラスの財産だけでなく、債務なども含めて問題になる可能性があります。

「友人に全財産をあげる」

という文章は一見シンプルですが、法律上はかなり重要な意味を持つため、慎重に設計する必要があります。

遺贈された人は必ず受け取らないといけない?

いいえ。

遺贈を受ける人、つまり受遺者は、遺贈を放棄することができます。

民法986条では、受遺者は遺言者の死亡後、遺贈を放棄できるとされています。

例えば、

「突然知らない土地を遺贈された」
「管理費ばかりかかる不動産なので受け取りたくない」

ということもあり得ます。

遺言者が一方的に、

「Aさんにこの土地をあげる」

と書いたからといって、Aさんが絶対に受け取らなければならないわけではありません。

生前に話しておく方がよい

特に相続人以外へ遺贈する場合には、

「遺言でこの財産を残したいと思っている」

と、可能であれば生前に伝えておく方がよいでしょう。

本人が全く知らないまま突然遺贈されると、相続開始後の手続が進みにくくなることがあります。

相続人以外へ遺贈すると遺留分はどうなる?

遺贈をするときにも、遺留分を無視することはできません。

例えば、

妻と子どもがいるにもかかわらず、

全財産を友人Aに遺贈する。

という遺言を作ったとします。

遺言自体が直ちに無効になるわけではありません。

しかし、妻や子どもには遺留分があるため、その遺留分を侵害していれば、友人Aが遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

したがって、

「自分の財産だから友人に100%残せる」

と単純に考えるのは危険です。

関連記事:遺言書があっても遺留分は請求される?遺留分と遺言の関係

兄弟姉妹には遺留分がない

一方、兄弟姉妹には遺留分がありません。

例えば、

  • 配偶者・子どもはいない
  • 両親も死亡している
  • 法定相続人は兄弟姉妹
  • 財産は長年世話をしてくれた友人へ残したい

という場合です。

有効な遺言によって友人へ財産を遺贈したとしても、兄弟姉妹は遺留分侵害額請求をすることはできません。

そのため、子どものいない方やおひとりさまでは、遺贈を利用する意味が大きくなることがあります。

相続人以外に遺贈すると相続税はどうなる?

ここは税金の注意点です。

相続税は法定相続人だけに課税されるものではありません。

遺贈によって財産を取得した人にも相続税が課税される場合があります。

さらに、国税庁によると、被相続人の配偶者や一親等の血族等以外の人が相続・遺贈で財産を取得した場合には、原則としてその人の相続税額に20%相当額が加算されます。 国税庁

例えば、

  • 友人
  • 兄弟姉妹
  • 甥・姪

などは、2割加算の対象となることがあります。 国税庁

孫も注意

孫についても、

「孫だから2割加算されない」

とは限りません。

国税庁は、代襲相続人となった孫など一定の場合を除き、孫について相続税額の2割加算の対象になるケースがあると案内しています。

相続税が発生しそうな財産規模の場合は、遺言作成段階から税理士への相談も検討するとよいでしょう。

基礎控除は「受遺者の人数」を増やせば増える?

ここも勘違いしやすいところです。

相続税の基礎控除は、基本的に、

3,000万円+600万円×法定相続人の数

によって計算します。

相続人ではない友人や孫へ遺贈したからといって、その人が「法定相続人の数」に追加され、基礎控除が増えるわけではありません。

「財産を5人へ遺贈すれば控除も5人分増える」という仕組みではないので注意が必要です。

不動産を遺贈する場合は特に慎重に

現金100万円を遺贈するのと、不動産を遺贈するのでは実務上の負担がかなり違います。

例えば、

自宅土地建物を友人Aに遺贈する。

というケースです。

相続開始後には、不動産の名義を変更する登記手続が必要になります。

また、

  • 不動産の評価
  • 固定資産税
  • 維持管理
  • 遺留分
  • 相続税
  • 登録免許税など

も問題になります。

そのため、不動産を相続人以外へ遺贈する場合には、遺言書の一文だけで終わらず、その後の手続や税負担まで確認しておくことが重要です。

登記については司法書士、税務については税理士との連携が必要になる場合があります。

相続人以外への遺贈では遺言執行者を指定した方がいい?

検討する価値は高いです。

例えば、

「友人Aへ500万円遺贈する」

と遺言書に書いても、亡くなった後に実際の手続をする人が必要です。

民法では、遺言執行者がいる場合、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うとされています。

そのため、相続人以外への遺贈がある遺言では、

遺言者は、本遺言の遺言執行者として〇〇を指定する。

と遺言執行者を決めておくと、誰が手続を行うのか明確になります。

関連記事:遺言執行者とは?必要なケース・できること・誰を選べばいい?

受遺者が先に亡くなった場合にも注意

例えば、

友人Aに300万円を遺贈する。

という遺言を作ったものの、Aさんが遺言者より先に亡くなった場合です。

民法では、受遺者が遺言者より先に死亡した場合には、原則としてその遺贈は効力を生じません。現行民法にも「受遺者の死亡による遺贈の失効」が規定されています。

つまり、

「Aが亡くなったからAの子が自動的に300万円を受け取る」

とは限りません。

そこで、

Aが遺言者より先に死亡した場合にはBに遺贈する。

という予備的遺言を検討できます。

関連記事:遺言で指定した相続人が先に亡くなったら?予備的遺言の書き方を解説

遺贈するときは「誰なのか」を明確にする

例えば、

お世話になった田中さんに500万円を遺贈する。

だけでは、同姓同名の人がいたり、本人を特定できなかったりする可能性があります。

相続人以外へ財産を遺贈する場合には、

受遺者を第三者が見ても特定できる内容にしておくこと

が重要です。

住所、生年月日、氏名などを利用して特定することを検討します。

法人へ遺贈する場合にも、正式な法人名や所在地等を確認しておいた方が安全です。

団体へ寄付することもできる

遺贈は個人だけが対象ではありません。

例えば、

  • 社会福祉法人
  • 公益法人
  • 学校法人
  • NPO法人

などへ財産を遺贈する、いわゆる遺贈寄付をする方法もあります。

ただし、団体によっては、

「不動産の遺贈は受け付けない」
「現金化してからの寄付のみ受け付ける」

など、受入条件を設けている場合があります。

寄付先が決まっているのであれば、遺言書を作る前にその団体へ受入条件を確認する方が安全です。

「相続人以外に残したい」と思ったら確認したいこと

遺贈を考える場合、最低限、次の点は整理しておきたいところです。

  1. 財産を渡したい人が本当に法定相続人ではないか
  2. 誰に、どの財産を残すのか
  3. 他の相続人の遺留分を侵害しないか
  4. 受遺者が財産を受け取る意思がありそうか
  5. 相続税や2割加算が問題にならないか
  6. 受遺者が先に亡くなった場合をどうするか
  7. 誰が実際に遺贈を実行するのか

特に、相続人以外への遺贈では、

遺言内容だけでなく「相続開始後に誰がどう動くのか」

まで考えることが重要です。

まとめ

遺言書を利用すれば、法定相続人以外の人にも財産を残すことができます。

これを遺贈といいます。

例えば、

友人、内縁のパートナー、相続人ではない孫や甥・姪、各種法人などへ財産を残すことが可能です。法務局も、法定相続人ではない人や法人へ財産を譲りたい場合には、遺言書を作成する必要性が高いと案内しています。

ただし、相続人以外への遺贈では、

  • 遺留分
  • 相続税
  • 2割加算
  • 受遺者の死亡
  • 遺言執行
  • 不動産の手続

なども考える必要があります。

単に、

「この人にあげたい」

だけでなく、

「自分が亡くなった後、本当にその人へ財産を渡せる仕組みになっているか」

まで設計することが重要です。

はいしま行政書士事務所では、

「お世話になった友人に財産を残したい」
「孫に直接預金を残したい」
「甥や姪に不動産を残したい」
「相続人ではない人への遺贈がある遺言を作りたい」

といった段階からご相談いただけます。

相続関係、遺留分、財産内容などを整理しながら、ご本人の希望を実現しやすい遺言内容を一緒に検討いたします。

※本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づく一般的な情報です。税務・登記・紛争対応等については、必要に応じて税理士・司法書士・弁護士等への相談が必要となる場合があります。

参考リンク

東京法務局「自筆証書遺言書保管制度とは?」

e-Gov法令検索「民法」

国税庁「相続税額の2割加算」

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