自宅を整理していたところ、亡くなった父が書いた遺言書が見つかった。
そんなとき、
「すぐに開けて中身を確認していいの?」
「家庭裁判所で何か手続が必要なの?」
「検認には期限がある?」
と戸惑う方も多いでしょう。
自宅などで保管されていた自筆証書遺言を発見した場合、原則として家庭裁判所で**「検認」**という手続を行う必要があります。
特に注意したいのが、封印された遺言書です。
封印のある遺言書は、勝手に開封せず、家庭裁判所で所定の手続に従って開封する必要があります。民法では、遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人は、相続開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所へ提出して検認を請求するものとされています。
この記事では、遺言書の検認とは何か、必要書類、手続の流れ、期限、費用、そして誤って遺言書を開封してしまった場合までわかりやすく解説します。
遺言書の「検認」とは?
検認とは、家庭裁判所が、
- 遺言書がどのような状態だったか
- どのような内容が記載されているか
- 日付や署名はどうなっているか
- 加筆や訂正があるか
などを確認し、その時点の遺言書の状態を明確にする手続です。
目的は、相続人に遺言書の存在と内容を知らせるとともに、遺言書が後から偽造・変造されることを防止することにあります。
ここで非常に重要なのが、
検認は「この遺言書が法律上有効かどうか」を判断する手続ではない
ということです。裁判所も、検認は遺言の有効・無効を判断する手続ではないと明記しています。
したがって、
検認を受けた
=その遺言書が有効だと裁判所が認めた
という意味ではありません。
遺言書の有効性と、検認手続は別の問題です。
どんな遺言書に検認が必要?
代表的なのは、自宅などで保管されていた自筆証書遺言です。
例えば、
「父の机の引き出しから手書きの遺言書が出てきた」
という場合には、原則として検認が必要です。
一方、次の遺言書については検認が不要です。
公正証書遺言
公証人が作成する公正証書遺言については、民法1004条による検認手続は必要ありません。
法務局で保管されている自筆証書遺言
自筆証書遺言でも、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合には、家庭裁判所での検認は不要です。
これは法務局保管制度の大きなメリットの一つです。
関連記事:法務局の自筆証書遺言書保管制度とは?メリット・デメリットを解説
遺言書を発見したら、まず何をすればいい?
自筆の遺言書を発見した場合、特に封印されているものについては、まずその場で開封しないことが大切です。
そのままの状態で保管し、家庭裁判所への検認申立てを準備します。
裁判所のQ&Aでも、自筆の遺言書を発見した場合は、自分で開封せず、速やかに検認を申し立てるよう案内されています。
こんな行動は避けましょう
- 中身が気になって封筒を開ける
- 書き込みをする
- 折り目や汚れを直そうとする
- 相続人だけで確認して処分する
遺言書は、発見した時点の状態をできるだけ維持することが重要です。
検認は誰が申し立てる?
検認を申し立てることができるのは、
遺言書の保管者
または
遺言書を発見した相続人
です。
例えば、母が父の遺言書を保管していた場合には母が申し立てることができます。
また、父の死後に長男が遺品整理中に遺言書を発見した場合には、長男が申し立てることができます。
どこの家庭裁判所に申し立てる?
申立先は、
遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
です。
遺言書を発見した人の住所地ではありません。
例えば、遺言者が亡くなるまでさいたま市に住んでいたのであれば、その住所地を管轄する家庭裁判所を確認することになります。
申立先を間違えないよう、裁判所の管轄を事前に確認しておきましょう。
遺言書の検認に期限はある?
「亡くなってから3か月以内ですか?」
という疑問を持つ方もいます。
検認について、
「死亡から○か月以内」
という具体的な日数の期限は定められていません。
民法1004条では、遺言書の保管者は**「相続の開始を知った後、遅滞なく」**検認を請求しなければならないとされています。
また、遺言書の保管者がいない場合には、相続人が遺言書を発見した後、同様に遅滞なく検認を請求します。
したがって、
「期限が明確に決まっていないから、半年後でも1年後でもいい」
と考えるのは適切ではありません。
遺言書を発見したら、できるだけ早く準備を始めるべきでしょう。
相続放棄の「3か月」とは別です
ここは混同しやすいところです。
相続放棄には、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月という熟慮期間があります。
一方、遺言書の検認については「3か月以内」と定められているわけではありません。
別の制度として考える必要があります。
検認の申立てに必要な書類
一般的には、次のような書類を準備します。
1.遺言書検認申立書
裁判所のホームページから書式と記載例を入手できます。
2.遺言者の戸籍
基本的には、遺言者について出生時から死亡時までの連続した戸籍・除籍・改製原戸籍などが必要になります。
これは、
「誰が法定相続人なのか」
を家庭裁判所が確認するためです。
3.相続人の戸籍
相続人全員の戸籍謄本等が必要になります。
ただし、
- 子が相続人になる場合
- 父母が相続人になる場合
- 兄弟姉妹が相続人になる場合
- 甥・姪が代襲相続する場合
など、相続関係によって必要になる戸籍の範囲が変わります。
兄弟姉妹相続などでは戸籍の量がかなり多くなることがあります。
4.遺言書の写しなど
裁判所によって提出方法に細かな違いがあります。
例えば東京家庭裁判所では、封印されていない遺言書の場合には、申立時に遺言書の写しを添付する案内となっています。
一方、遺言書の原本自体は検認期日に持参する取扱いとされています。
実際に申し立てる際は、申立先の家庭裁判所の最新案内を確認してください。
検認にかかる費用
裁判所への申立手数料は、
遺言書1通につき収入印紙800円
です。
これとは別に、相続人への通知などに使う郵便料が必要です。
郵便料は申立先の家庭裁判所によって取扱いが異なる場合があるため、最新の情報を確認してください。
なお、検認終了後に「検認済証明書」の交付を申請する場合には、遺言書1通につき150円の収入印紙が必要と案内されています。
遺言書の検認はどのように進む?
大まかな流れを整理すると、次のようになります。
1.遺言書を発見する
遺言書をそのままの状態で保管します。
封印されている場合は開封しません。
2.戸籍などを集める
遺言者の出生から死亡までの戸籍や、相続人の戸籍などを収集します。
相続人が兄弟姉妹や甥・姪まで広がる場合には、この作業に時間がかかることがあります。
3.家庭裁判所へ申し立てる
遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ検認を申し立てます。
4.家庭裁判所から検認期日の通知が届く
申立て後、家庭裁判所が検認を行う日を指定し、申立人や相続人へ通知します。裁判所
5.家庭裁判所で遺言書を確認する
検認期日には、遺言書の状態や内容が確認されます。
封印されている遺言書については、この場で所定の手続に従って開封します。
6.検認済証明書を取得する
検認終了後、申請により検認済証明書を遺言書に付けてもらうことができます。
その後、遺言内容に応じて、
- 不動産の相続登記
- 預貯金の解約・名義変更
- 遺贈
- その他の相続手続
などへ進んでいくことになります。
相続人全員が検認に出席しないといけない?
相続人全員が必ず出席しなければならないわけではありません。
裁判所は検認期日を相続人に通知しますが、申立人以外の相続人については、必ずしも出席する必要はないと案内しています。
つまり、
「弟が来られないから検認ができない」
「兄弟全員の日程を合わせないといけない」
ということではありません。
欠席した相続人がいることだけを理由に、検認ができなくなるわけではありません。
遺言書を勝手に開封してしまったらどうなる?
非常に検索されやすいところです。
封印された遺言書については、家庭裁判所において、相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できないと民法で定められています。
そして、
- 検認を経ずに遺言を執行した
- 家庭裁判所以外で封印された遺言書を開封した
場合には、5万円以下の過料に処せられる可能性があります。
開封したら遺言書は無効になる?
ここは重要です。
勝手に開封したという事実だけで、遺言書が当然に無効になるわけではありません。
民法1005条は、家庭裁判所以外で開封した場合について5万円以下の過料を定めていますが、「開封した遺言は無効になる」とは規定していません。
したがって、
「開けてしまった!もう遺言書は使えない」
と考えて捨てたり、書き直したりしてはいけません。
そのまま保管し、速やかに家庭裁判所へ検認の申立てをすることが重要です。
開封済みでも検認は必要
「もう開けて中身を見てしまったから、検認をしても意味がない」
ということではありません。
開封済みであっても、検認が必要な遺言書であれば、家庭裁判所へ申し立てます。
実際に裁判所の申立案内でも、遺言書が開封されている場合を前提とした提出書類について案内されています。
間違って開封してしまった場合でも、そこで手続を止めないことが重要です。
検認をしないと遺言書は無効になる?
これもよくある誤解です。
検認は遺言書の有効・無効を判断する手続ではありません。
したがって、
検認していない=当然に遺言書が無効
という関係ではありません。
ただし、検認が必要な遺言書について、検認をせずに遺言内容を実行することは適切ではありません。
民法では、検認を怠ったり、検認を経ないで遺言を執行した場合にも、5万円以下の過料の対象となる可能性があります。
そのため、
「有効なら検認しなくてもいいだろう」
という判断は避けるべきです。
検認を受ければ遺言書は有効になる?
反対に、
「家庭裁判所で検認を受けたから、この遺言書は絶対に有効」
という意味でもありません。
検認は、
遺言書の現在の状態を確認・記録する手続
です。
例えば、
- 自筆証書遺言の方式を満たしていない
- 遺言作成時に遺言能力がなかった
- 遺言の内容について解釈上の争いがある
といった問題があれば、検認後であっても遺言の有効性が争われる場合があります。
裁判所も、検認済証明書は検認手続が終了したことを示すものであって、遺言書の有効性を証明するものではないと説明しています。
遺言書を作る側から見れば「検認不要」にしておく方法もある
ここまでは、遺言者が亡くなった後の手続について説明してきました。
一方、これから遺言書を作成する方であれば、家族に検認の負担を残さない方法もあります。
代表的なのが、
公正証書遺言
または
自筆証書遺言+法務局の保管制度
です。
法務局で保管された自筆証書遺言については、家庭裁判所での検認が不要です。
検認では、相続関係を証明するために多数の戸籍を収集する必要が生じることがあります。
特に相続人が兄弟姉妹や甥・姪まで広がるケースでは、残された家族の負担も小さくありません。
遺言書を作る際には、
「自分が書きやすいか」だけでなく、「亡くなった後に家族が手続しやすいか」
という視点も大切です。
まとめ
遺言書の検認とは、家庭裁判所で遺言書の状態を確認し、相続人へその存在と内容を知らせ、偽造・変造を防ぐための手続です。
ポイントを整理すると、
- 自宅保管の自筆証書遺言などは原則として検認が必要
- 公正証書遺言は検認不要
- 法務局保管の自筆証書遺言も検認不要
- 検認は遺言の有効・無効を判断する手続ではない
- 検認の期限は「○か月以内」ではなく「遅滞なく」
- 封印された遺言書は家庭裁判所以外で開封しない
- 勝手に開封しても、それだけで遺言書が当然に無効になるわけではない
- 検認をしないまま遺言を執行すると、5万円以下の過料となる可能性がある
という点が重要です。
遺言書が見つかった場合には、まず勝手に開封・処分せず、その遺言書が検認を必要とするものなのかを確認しましょう。
はいしま行政書士事務所では、遺言書作成や相続人・相続関係の整理などについてご相談いただけます。
なお、家庭裁判所へ提出する検認申立書の作成や、すでに紛争となっている事案については行政書士業務とは異なるため、必要に応じて司法書士・弁護士等への相談を検討することになります。
遺言書が見つかったものの、
「まず何から確認したらいいのか分からない」
という場合には、相続関係や今後必要になる手続を整理するところから始めるとよいでしょう。
※本記事は2026年9月時点の法令・制度に基づく一般的な情報です。個別の事案や裁判所によって必要書類・郵便料等が異なる場合があります。
参考リンク
遺言書作成について詳しく知りたい方へ
遺言書は、家族構成や財産の内容によって、適した作成方法が異なります。
「自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選べばいい?」
「自分の場合、遺言書を作った方がいい?」
「行政書士に依頼すると、どこまでサポートしてもらえる?」
このような疑問がある方は、遺言書作成サポートのページをご覧ください。
自筆証書遺言・公正証書遺言の違い、料金、ご相談から作成までの流れをまとめています。

